本書のタイトル「ABBECEDARIO アッベチェダーリオ」は教科書、入門書の意味です。
現在はあまり使われませんが、イタリア人にとってはすぐにピノッキオを思い出すような、 かわいい言葉なのです。 学校をサボったピノッキオは、親が苦労して買ってくれたアッベチェダーリオを売り、そのお金で人形劇を見に行きました。これは、ピノッキオの物語の中でも有名な場面です。(1881年、コッローディ作)

文法ですか、会話ですか?
私たちのイタリア会館・福岡を訪ねる多くの方によく聞かれます「文法ですか、それとも会話を教えるのですか」。なんて答えればよいのか。会話は、その場の思いのやりとりなのに、どうやって会話を教えられるのでしょうか。確かに文法は“文章を作る上のきまり”ですから、会話といえども文法なしで文はできません。一方では、文法嫌いの人のために会話文例を主とした本がたくさん出ています。 その文章をそっくり暗記する方法もありますが大変だと思います。 暗記した文章が相手に通じても、返ってくる言葉が暗記した文と違っていたら、途端に解らない。せっかく苦労して覚えたのに。
こうして、詳し過ぎる文法と多すぎる暗記という壁の前で本を投げ出しそうになる。 それよりも、ある程度の名詞、形容詞、動詞などを数少なく暗記しながら、必要最小限だけの文法を覚え、あとは自分の頭に任せた方が無理なく自分だけの文章を作れるでしょう。つまり、文法は道具であり、会話は一人ひとりの作品といえるのです。
このような考えから編まれた本書の特徴は、文法の説明をできるだけ省き「見て解るイタリア語」にしたことです。特に第J部はその方針を大いに生かしたつもりです。また、イタリア会館・福岡30周年を迎え、第3版を記念出版し第K部を増補、より初心者にも解りやすく、上級者向けにも文法事項や様々な読み物を沢山増やしました。新たなイタリア語の愉しみに出会って頂けることと思います。

楽しいイタリア語学習の友として、本書がみなさまのお役に立てれば何よりもうれしく思います。